日本人はリスニングが極めて苦手だ。それは正しい発音を覚えられるような勉強法をしてこなかったから。
学校ではカタカナで「日本人的な発音だけ教える」「英単語の発音をきちんと覚えない」「英語の音声を聞かない」。
このような勉強をしていてリスニング力が身に付くわけがない。
とはいえ、リスニング対策として、リスニング問題集をいきなりやっていく人がいるが、それも効果的な勉強法とは言えない。
リスニング力を強化するためには正しい勉強法とステップがある。それを今回は1つずつ解説していく。
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なぜリスニングが出来ないのか、3つ理由と2つの誤解
英語が聴き取れない理由は色々ある。1つずつ解説するので自分がどれに当てはまるのか確認しよう。
キムタツ先生はリスニングに必要な力として3つのSというものを提唱している。
- Structure(構造)つまり、文法力
- Sense(意味)つまり、表現力
- Sound(発音)つまり、聴解力
木村達哉『灘高キムタツの共通テスト試験英語リスニング合格の法則 (基礎編)』(アルク出版、2005年5月)10pより引用
私はそれに+αで「2つの誤解」を加えて、あなたが英語を聴き取れない理由を合計で5つ挙げてみようと思う。
英単語の意味がわからない
あまりに当たり前の話だが、英単語の意味がわからないと聞きとっても意味を理解することは出来ない。キムタツ先生はこれを3つのSのうち「Sense(意味)」と仰っている。
語彙力が貧弱な人は、リスニング対策をどうこう言うよりもまず真っ先に語彙力を増強するべきだ。それが一番の対策になる。
次に挙げる発音の項目のところで挙げる単語帳などで単熟語をしっかりと覚えて欲しい。
英文解釈・構造把握が出来ない、英文を前から理解できない
リスニングでは返り読みが出来ない。返り読みしているうちに次の英文が流れてしまうので聴き取れないからだ。
「I had my hair cut.」くらいの英文ならSVOC文型であることは一瞬で分かるが(このレベルで分からないならリスニング以前の問題)、
-
How much does it cost to send three postcards to the US?(2014年度共通テスト英語リスニングより抜粋)
これくらいの英文でも聴いた時に文構造がわかった上で前から訳せないといけない。これをキムタツ先生は3つのSのうち「Structure(構造)」と仰っている。
英単語の発音が分からない
当たり前だが「appear」などの単語を音だけで聞いて単語が浮かばなかったら話にならないだろう。キムタツ先生はこれを「Sound(発音)」と仰っている。
リスニング力アップの第一歩は1つ1つの英単語の発音・アクセントを完璧に覚えること、自分でも発音できるようになること。
意外に大切なのが中学英単語などの超基礎単語の発音だ。リスニング試験では中学英単語・熟語の登場頻度が高いからだ。共通テスト二次レベルの単語はそこまで出てこない。
『ユメタン〈0〉中学修了~高校基礎レベル―夢をかなえる英単語 (英語の超人になる!アルク学参シリーズ)』など超基礎レベルの単語帳の英単語を音声のみ聴いて、以下3つを徹底しよう。
- 英単語がパッと浮かぶようにする
- 発音記号を完璧に覚える
- 英単語をネイティブ並みに完璧に発音できるようにする
発音からして聴き取れない人は、まずは手持ちの単語帳やユメタン0のCDを徹底的に聴きこもう。
リスニング力にはリーディング力は関係ない?
以上の3つの理由でお分かりの通り、リスニング力はリーディング力が土台になっている、というより最低限のリーディング力がないとリスニングすらまともに出来ないということだ。
- 会話で出てくるようなカンタンな単熟語は完璧に覚えている、
- 発音アクセントを完璧に聞き取れる、
- 共通テストレベルの英文なら前からどんどん訳せるような読解力、
以上3つの力はリーディングでも必要なものだったりする。
そして、一部の受験生だが、共通テスト英語をまともに読めないのにリスニング対策をしようとしている人がいる。
これは100%的外れとはいえないかもしれないが、リスニング対策云々言う前に、普通に英語の勉強をしていったほうが良いだろう。
リスニングは特別な対策が必要である?
多くの受験生はリスニング対策は専用の問題集などで特別に対策する、といったイメージをお持ちのようだが、それは大きな間違いだ。
普通に英語の勉強をしていたら、リーディング力とリスニング力がバランスよく上がっていくのが正しい英語の勉強法だ。
99%の受験生はそうはならないが、それは発音軽視、聴き込み軽視、音読軽視の勉強法をしているからだろう。
- 英単語を覚えるときは必ず音声を聴いてリピーティング(単語帳を見ないで発音を真似)出来るようにすること
- 長文を読むときもCDを聴いて聴き込み、音読する習慣を身につけること
この2点を普段から気をつけるだけでリスニング力の土台は完成する。
英語をある程度勉強してからリスニングの対策をするか、リスニングを意識してCD使いはじめるか、というのは非常に効率が悪い。
普段の勉強がそのままリスニング対策になるような意識と勉強法で勉強していくべきだ。
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【対策の前に…】発音記号は必ず覚えよう!
正しい発音を覚えて英語が得意になる、リスニング力を鍛えるためにはやはり発音記号はぜひ覚えておくべきだ。発音記号を覚えることで、CD音声がなくても正しい発音ができるようになるからだ。
カタカナで英語の発音を覚えてはいけない。間違った「日本語の英語発音」が身についてしまうからだ。
例えば「atmosphere」という単語の発音ができるだろうか。これは発音とアクセントに注意すべき単語だ。ほとんどの人がきちんと発音できないだろう。
「アトモスフィアー」ではない。「ǽtməsfìər」なのだ。わからない人は「goo辞書>atmosphere」で発音を確認。このように、カタカナで英単語の発音を正確に表すことは出来ないのだから、カタカナで発音を覚えてはいけない。
じゃあどうやって発音記号を覚えるか。単語帳のまえがきに発音記号が載っていたり、『データベース』などではCDに発音記号の音声が収録されていたりするので、それで覚えるのが1つ。
2つ目、HPで学ぶなら「発音記号一覧表 英語の発音教室PLS&発音学べるサイト-」が実際の発音も聴けるので無料で学ぶなら良いだろう。
※実は私は発音記号は意識して覚えなかった。常にCDを聴いて発音記号を眺めながら発音していたので「この記号はこういう発音だ」というのを自然と覚えてしまった。
Structure=構造把握力、前から読む力を鍛える
次にStructure、Sense、Soundの3つのSを鍛えていこう。とは言っても、特別な対策用の参考書は必要ない。
普通に英語力を鍛えるための参考書、問題集を正しく使っていくだけだ。
このStructureのパートでは主に2つを鍛える。
- 英文解釈力=構造把握力
- 英文を左から右に理解してく感覚を身につける
英文構造を一瞬で把握する力を身につける
共通テストレベルの構造把握力を鍛えるのにおすすめの参考書は『入門英文解釈の技術70 (大学受験スーパーゼミ徹底攻略)』だ。
英文解釈の参考書だがCD付きなので、音声を聴いて音読を繰り返すことで解釈力とリスニング力を同時に鍛えることが出来る。
使い方は「英文解釈の技術の使い方|入門70基礎100技術100」をチェックして欲しい。
英文を左から理解する思考回路を作る
次に英文を前から読む習慣をつける。主に使うのは「速読英単語系」の参考書やCD付きの長文問題集がいいだろう。
偏差値50以下の人、音読慣れをしてない人におすすめできるのが『5STEPアクティブ・リーディング』だ。
この参考書では100語程度の短い長文を、CD音声を使って徹底的に音読する方法を学ぶことが出来る。
前から英文を理解していくといういわゆる「スラッシュリーディング」の感覚を身につけることが出来るので非常におすすめだ。
共通テストレベルなら「速読英単語必修編」「速読英熟語」などがいいだろう。
長文問題集なら『英語長文レベル別問題集』『キムタツ式英語長文速読特訓ゼミ』などがCD付きなのでオススメだ。
英語を左から右に理解していく感覚は10本20本程度の読み込みでは作れない。最低でも100本の長文を聴き込み、読み込んでいくという気合で取り組もう。
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結局最低限の数をこなさなければ前から読む思考回路は身に付けることは出来ないからだ。
Sense=語彙力を鍛える
このパートはシンプル。しっかりと語彙力を増やしていくということだ。具体的には
- 英単語
- 英熟語
- 構文
以上3つ。色々な表現を覚えて「アレッ、この意味なんだっけ?」とならないようにしよう(実際の試験でこのように迷ったら一発アウトだと思って欲しい)。
さてこの3つだが、上に挙げた「速読英単語必修編(英単語)」「速読英熟語(英熟語、構文)」を勉強すれば十分な数を覚えられるだろう。
もちろん他の教材でもいいので、手持ちの単語帳や熟語帳、出来れば『英語構文基本300選』などのような構文集で3つの表現力を増やしていって欲しい。
Sound=リエゾンや音の欠落などにも慣れる
ここでは主に2つを鍛える。
- 英単語熟語の発音アクセントを完璧に覚える
- リエゾンや音の欠落、連結などに慣れる、そういう例にたくさん触れる
英単語熟語の発音アクセントを完璧に覚える
繰り返し述べているように、単語の発音が聴き取れなければ絶対に会話内容を理解することは出来ない。
手持ちの英単語帳のCDを聴いて(CDがないなら別の単語帳を買うこと)、自分で完璧にネイティブのように発音できるように練習しよう。
人は自分が発音できない音を聴き取れないものなので、必ずネイティブのように発音出来るように。
リエゾンや音の欠落、連結などに慣れる、そういう例にたくさん触れる
たとえば「Check it out!」が「チェケラゥ」と聞こえるように、英語には音の連結や音の欠落などがある。
これに慣れていないと英語を聞き取れるようにはならない。多くの人が苦手としている部分だ。
こういうサイトで概要をつかんだら、あとは実践あるのみ。
具体的には、音声を聞いた時に、音の連結や音の欠落がある部分には自分なりの印をつけておこう。
例えば先ほど挙げた英文だと
- How much does it cost to send three postcards to the US?
発音に気をつける部分にこのように下線を引いたりマルをつけたりしておこう。
リスニング力を圧倒的に上げる為に欠かせない3つの音読方法
ここでは、CD音声を使って英語を聴き込み、読み込みをしていく上で必ずやってほしい音読の方法を3つ解説する。
それは以下の3つだ。
- サイト・トランスレーション
- 同時通訳
- シャドウイング
サイト・トランスレーション
サイト・トランスレーションとは、あるひとまとまりの英語のカタマリ(サイト)毎に英語を訳していく練習方法だ。
- ①How much does it cost / ②to send three postcards / ③to the US?
(いくらかかるだろうか/3枚のはがきを送るのに/アメリカに)
巷で言うスラッシュリーディングと同じようなものだ。英語を左から前に理解していくのだ。
①を読んで和訳を言う、②を読んで和訳を言う、③を読んで和訳を言う…というのをスピーディに詰まらずにテキパキ言えるようになるまで練習をしよう。
これが出来ないならCDを聴いて順番に前から理解することは出来ない。声に出すのは大変だと思うが、頭で訳すだけだといい加減な理解しか出来ないので、最初はしっかり声に出してみよう。
ただ、慣れてくると和訳はむしろスピーディな理解の枷となってしまう。ゆくゆくは英語を英語のままで理解できるようにしたい。
私がおすすめしている感覚としては「ルー大柴」さんのように、「どれくらいコストかかる?ポストカードをUSAにsendするのにさ〜」といったイメージで訳す習慣をつけること。実際、英語が話せる人は日常で使う言葉がほぼ英語になっていることが少なくない。
cost=コストなどといった英単語は、ほぼ日本語になっている。こういった日本語になっている英語や、訳さなくてもわかるようになってきた英単語はそのままで理解してみよう。
同時通訳
同時通訳は、CD音声を流して、それに少し遅れて和訳をどんどん言っていく練習方法だ。
アメリカの大統領のスピーチや、サッカー日本代表の試合感想などをテレビ放送している時、話を聴いてその場で訳す人がいるだろう。
それが同時通釈者であるが、彼が聴いたその場で訳すということを、あなたも手持ちの参考書の英語で練習するということだ。
これを行うことで爆発的にリスニング力が向上する。なぜなら、聴いたその場で訳せるなら、会話内容、流れる音声内容は全て理解できるからだ。
同時通訳が出来れば理論上リスニング試験で解けない問題はなくなる。
シャドウイング
シャドウイングは、音声のみを聴いて英文を真似して言っていく勉強方法だ。これはかなり難しいので、
- 最初は英文を見ながら音読、
- 次はテキストをチラ見しながら音読、
- 慣れたら音声だけ聴いて音読、
と言う3ステップでやっていくとよいだろう。
音読初心者はこの3つをやる前にやって欲しいステップが何個もある。共通テストリスニングで30点以下、全然音読慣れしてないよ〜と言う人は以下の記事を熟読しておこう。
リスニング対策におすすめの問題集
リスニングに特別な対策は必要ない、と冒頭でお話したが、それは「リスニングの地力」の話である。
速単や速熟などで100本以上、同時通訳などをこなしてきたのなら、共通テストリスニングで36〜40点くらいは取れるようになるだろう。もちろん対策なしで9割近く取れるようになる人もいるだろう。
ただそれ以上を目指すなら、やはりある程度の問題演習は必要だし、2次試験で必要ならより難しいリスニング問題にも対応できるようにしなければならない。
- キムタツの共通テスト試験英語リスニング合格の法則
- 大学入試パーフェクトリスニング (Volume1)
- 大学入試パーフェクトリスニング (Volume2)
- 灘高キムタツの東大英語リスニング (英語の超人になる!アルク学参シリーズ)
難関レベルの長文の読み込み、聴き込み教材としては『速読速聴・英単語 Core 1900 ver.4』『キムタツ式英語長文速読特訓ゼミ 難関レベル編』などがおすすめ。どちらもCD音声のスピードがかなり速い。
東大や外大など最難関レベルのリスニングを受ける人はかなり速いスピードでも十分に聴きとって理解できるように訓練しなければならない。
ディクテーションも出来れば取り組もう
英語耳を作るために、勉強の初期段階ではディクテーション(英語を聴いて特定の単語を聴き取って書き取る作業)をぜひしてほしい。
例えば『速読英単語必修編』のCDにはディクテーション教材もある。こういう教材をフル活用していこう。
リスニング問題集の超具体的な勉強手順
具体的な手順としてはキムタツ先生がブログに詳しく書いて下さっている。実に17もの手順を説明されている。かなり細かく手順がわかりやすくなっている。
問題集に取り組む前に必ずチェックしておこう。
【番外編】ちょっと楽しくリスニング力を上げる方法
勉強勉強!というよりは楽しくリスニング力を上げたいなぁ、と言う人は洋楽を聴いたり洋画を吹き替えで聴いたりしてもいいだろう。
英語長文で音読する時に、ネイティブの真似をすると恥ずかしい!と言う人でも、洋楽や英語の歌を歌うときはきれいな発音の方がカッコイイので、恥ずかしがり屋の人でも良い発音が身に付きやすい。
私は洋楽では「BackStreet Boys」、邦楽では「RADWIMPS」「ELLEGARDEN」などの英語の歌を歌って発音を身に付けた。最近では「ONE OK ROCK」などが人気でおすすめだろう。
洋画を見る場合は、音声を英語にして、字幕も英語にしてシャドウイングしてみるのもいいだろう。
音読の方法については「確実に読解力が伸びる!正しい英語音読の方法と10の手順」で詳しく解説しているのでぜひ読んでおいて欲しい。
こちらでは英語を音読したことがない人でも1からわかるように音読のお手本も紹介してある。ぜひ一読していただきたい。
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