今回はZ会出版の古文問題集『古文上達 基礎編 読解と演習45』と『古文上達 読解と演習56』をご紹介する。

両書とも受験生に人気の参考書だが、書名の区別のしづらさから間違って買ってしまうことも多いようだ。

両書の内容紹介と上手な使い方を解説する。

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『古文上達基礎編45』と『古文上達56』の違いと呼称

良書は名前が似ているのでよく間違われるが、ここでその違いと呼び方を(勝手に)決めておきたいと思う。

  • 『古文上達基礎編 読解と演習45』→『(古文)上達基礎編45』or『(古文)上達45』
  • 『古文上達 読解と演習56』→『(古文)上達56』

実は『古文上達56』は三部構成になっている。「第一部 入門編」「第二部 基礎編」「第三部 演習編」なのだが、「古文上達基礎編」と言った場合、どちらかわからなくなる人がいるらしい(私がそうだった)。

したがって、古文上達という名前を上げるときはその問題数である数字も入れておくようにしたい。

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『古文上達基礎編 読解と演習45』とは

『古文上達基礎編45』の基本スペックと評価

  • [ジャンル]古文問題集
  • [問題数]45題
  • [難易度]易しめ:単語文法と短文解釈が出来ればOK
  • [到達レベル]入門→基礎:教科書が読める→共通テスト6割、中堅私大合格レベル
  • [勉強期間]1か月:1日3題15日×2周
  • [使用目的]基礎レベルの古文の総合力をつけるため
  • [勉強目標]各古文をスラスラ読める・問題を完璧に解ける
  • [対象者]共通テスト・マーチへの古文力を身に付けたい人

『古文上達 基礎編 読解と演習45 文法理解から応用まで』は2006年初版の(56と比べれば)新しめの古文問題集。

「古典文法を勉強して、易しめの古文を読みながら文法の復習もしたい」という人にピッタリだ。レベルもそこまで難しくなく、共通テスト古文準備レベルといえる。中堅大学なら『基礎編』で十分な力を付けることができるだろう。

『上達56』よりもレベルが下がって古文初心者にも薦めやすくなっているし、後述のように「古文の総合力」を伸ばすために工夫が多く施されている点も好評価。これからは『基礎編45』が古文参考書の鉄板になると期待している

『古文上達基礎編45』の構成と特徴

  1. 文法整理編
    「動詞、形容詞、形容動詞、助動詞、助詞、副詞、敬語、和歌」などの文法事項を学ぶ。①まとめ②集中講義③練習問題の3つが見開き1ページにまとめられている。
    一通り文法を勉強した人ならサクサク進められるはずだ。逆に、この段階でつまずくようならきちんと古典文法を勉強しなければならない。
  2. 問題演習編
    入試問題などの文章を使い、オリジナルの設問を配してある。設問は文法や和訳、短めの記述、大意把握など、古文の総合力が高まるようなバランスの良いものになっている。
    文章の難易度も、初めは説話など平易なもの、後半は物語や歌論など徐々に難しくなるように工夫されている。
  3. 解答解説編(別冊)
    解答解説のクオリティが非常に高い。「読解へのアプローチ」という本文理解のポイントが地味に良い。読解に生きる古文常識や、入試で問われる文法など、あなたの古文力養成に役立つ知識が得られる。
    本文解釈の部分は、本文のすぐ右に現代語訳が書いているので本文理解がたやすい。重要な文法部分の解説もある。
    本文解釈の上にある「あらすじ」も他にはなかなかないものだ。このあらすじを参考に、自分でも古文の展開を一言で言えるようにしたい。
    古文読解力で意外なキモとなる「古文常識」「オチをつかむ力や展開を読む力」を身に付けやすい解説の構成となっている。

『古文上達基礎編45』おすすめの参考書接続

まず単語と文法を一通り勉強していることが前提だ。出ないと文法講義や実戦問題を十分にこなせない。『古文読解ゴロゴ』と比較的近い使い方が出来るので、私は

  • 『古文読解ゴロゴ』→『古文上達基礎編45』

この2冊の接続でみっちり勉強することをおすすめしている。またタイミングはいつでもいいのだが、『古文読解ゴロゴ』か『古文上達基礎編45』の前後に『富井の古文読解をはじめからていねいに』も読んでおくと良い。

最難関大学を受験する人は

  • 『古文読解ゴロゴ』→『古文上達基礎編45』→『二刀流古文単語634』や『土屋の古文100』

という接続で圧倒的な語彙力を得ながら多読を積むと良いだろう。

共通テストを受ける国公立志望者なら、『古文上達基礎編45』の後に共通テスト対策の問題集を使うと良いだろう。『共通テスト 国語[古文]の点数が面白いほどとれる本』で共通テスト型の得点技術を学んでも良いし『マーク式基礎問題集 古文』で問題演習を積んでもいい。

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『古文上達基礎編45』の使い方

  1. 「文法整理編」を読み練習問題を解く。この段階の文法は完ぺきにしておくこと。
  2. 「実戦問題」を30分以内を目安に解く。
  3. 下の段の「出典」「注」「単語チェック」も見ながら問題を解く。
  4. 私立志望者も記述型の設問をしっかり解く。これくらいの記述問題はきちんと解かないと力はつかない。
  5. 別冊の解答解説を読み答え合わせをする。本文理解がイマイチ出来ていない人は本文解釈を行った後に設問解説を熟読する。
  6. 本文解釈の段階では「読解のアプローチ」「あらすじ」もきちんとチェックする。適宜、品詞分解を書き込みながら本文を理解する。
  7. 解説冊子の方で本文を音読と現代語訳を行う。慣れたら問題編の方の本文を見て音読する。最終的には自力でスラスラ訳せるように、10回を目安に音読を繰り返す。
  8. 本文を「100字程度」で要約してみる(口頭でOK)。その際「あらすじ」を手本に、簡潔に文章の展開、オチを言えるようにすると古文読解力がメキメキつく。
  9. 設問解説も熟読したら、もう一度問題を解く。その際「解説を再現」するイメージで、解答までの思考回路を言葉にしながら問題を解く。詰まったらもう一度解説を読み→シャドウティーチングを繰り返す。
  10. 本文の読み込みとシャドウティーチングを翌日と1週間は必ず行う。合計で20回程度本文の音読を繰り返す。

古文には「笑い話」や「恋愛話」が頻出する。笑い話の場合は「何が面白いのか」が理解できることがそのまま得点につながる。「恋愛話」の場合は「誰と誰が恋愛して、成就するのか悲恋になるのか」という結末が重要だ。

「あらすじ」を参考に「この話はこうこうこういう展開で、こういうオチだよ、こういうとこが面白いよ」と人に説明できるようにしておこう。学校の先生が授業中に笑いどころを話しているのを見たことがあるかもしれない。それをイメージして行おう。

『基礎編45』は本文解釈の説明が詳しく音読学習しやすい。ぜひ読解力を伸ばすために最大限活用してほしい。そのためには何度も何度も音読することが重要だ。ただテキトーに音読するのではなく、頭の中で主語を補ったり文章展開を意識しながら集中して音読を繰り返そう。

『古文上達 読解と演習56』とは

『古文上達56』の基本スペックと評価

  • [ジャンル]古文問題集
  • [問題数]基礎編30題(短め)+実戦問題26題
  • [難易度]難しめ:共通テスト8割程度の古文力が必要
  • [到達レベル]難関→最難関:マーチ→早稲田
  • [勉強期間](基礎編)1日3題10日/(演習編)1日2題13日→1.5か月で復習完了
  • [使用目的]難関レベルの古文の総合力を身に付けるため
  • [勉強目標]各古文がスラスラ読める・問題を完璧に解ける
  • [対象者]最難関大学を受験する受験生

『古文上達 読解と演習56』は1991年初版の伝統的名著。一般的には難関レベルとされているが、実際は東大や早稲田などを受験する最難関大学レベルを受験する人向けの問題集と言える。

解説のテイストがZ会らしく詳しいのだが「古文好き」じゃないとアレルギーを起こすかもしれない。古文が難しい大学・学部を受験する「古文が得意な人」が使用するべき問題集と言える。

古文が好きなら解説を読んでいても楽しいが、得意じゃない人からしたらただの苦行と感じるかもしれないので注意。たとえばマーチレベルまでなら『上達基礎編45』まででも過去問を解くための基礎力は身に付く。

また異様に難しかったり「こんな問い方ある?」といった設問も散見される。

それに「国公立」「私立」どちらに薦めていいかわかりにくくなっている感もある。難関私立大学を目指すなら最近だと『首都圏「難関」私大古文演習』もあるし、使い勝手が悪くなってきているかもしれない。

『古文上達56』の構成と特徴

三部構成である。

  • 第一部は「入門編」と称し、古文上達への道や雑学を書いている。ここは読み流しても可。
  • 第二部は「基礎編」4行~7行程度の短い古文と問題が30題ある。解説は簡潔である。
  • 第三部は「演習編」ほぼ入試問題そのまま26題。別冊解説が非常に分厚い。

『上達56』は1991年初版であり、問題(というか設問)が古いのが否めない。作ったのが91年ということは、入試問題として出題されたのはもっと前だ。さすがに古くなってきていると思う。

もちろん使えないわけではないが『基礎編45』や前述の『首都圏』のように新しい問題集の方が使いやすい。

とはいえ、古文好きなら十分満足できる内容にはなっているだろう。特に演習問題の解説は秀逸。もしあなたが文学部志望で古典を研究するつもりがあるならぜひ今から読んでおくことをおすすめする。

第一部を読んで「つまんねえな」と思ったらこのテキストは使用するべきではないかもしれない

古文の豆知識や常識をかなり詳しく解説しているため、古文が好きじゃない人間はアレルギー反応を起こすからだ。

『古文上達56』のおすすめ参考書接続

  • 『基礎編45』→『上達56』

という接続が良く見られるが、個人的には間に『土屋古文100』や『二刀流634』など最低でも1,2冊参考書を挟んでおきたい。『上達56』はかなりハイレベルな参考書だからだ。

古文がかなり得意なツワモノは

  • 『上達56』→『最強の古文』

と接続することが多いかもしれないが、『最強』の方は無理してやる必要のない参考書だ。古文好きならぜひ読んでおいてほしい内容にはなっているが。

まとめ

『古文上達基礎編45』は取っつきやすく使いやすい良書。単語文法と『読解ゴロゴ』あたりである程度古文が読めるようになったら取り組むとよい。

『古文上達56』は古文好きの人にのみおすすめする。私立専願者なら本書よりも『首都圏「難関」私大古文演習』の方が実戦的で新しく使いやすいだろう。

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