速読力を上げたい。語彙力を増やしたい。そんな一石二鳥の英単語帳が速読英単語だ。 今回は2014年に第6版が出てより使いやすくなった「速読英単語 (1)必修編 [改訂第6版]」とそのほかの速単シリーズをご紹介する。
目玉はやはり『速読英単語必修編分冊』バージョン。速単の欠点とされていた単語帳としての使いづらさを解消し、ほぼカンペキと言っていいクオリティのものにしてしまっている。 使用者が非常に多い速単だが、誤った使い方をしている人も多い。速単のシリーズ解説とレベル、その使い方を解説する。
速単シリーズ紹介
- [ジャンル]速単系(設問がなく長文中で単語を覚えていく本)
- [勉強期間]2か月:1日2文~3文1か月で1周→1日5分程度で数周
- [使用目的]長文の読み慣れ、速読力とリスニング力の強化
- [勉強目標]全英文をスラスラとシャドウイングできる
- [対象者]単熟語と速読力・リスニング力を鍛えたい人
(以上はシリーズ共通) 速単シリーズには、主に以下の参考書がある。
- 速読英単語入門編
- 速読英単語必修編
- 速読英単語上級編
- 速読英熟語
- 話題別英単語リンガメタリカ
一つずつ紹介しよう。
速読英単語 中学版
基本英単語は『キクタンEntry』『キクジュク中学英熟語』などでさっさと覚えた方が早い。 だいたい高1レベルの英単語を使用した速単入門編。だが、私は高校生にこの単語帳を積極的には薦めていない。このレベルの単語は、文脈ではなく辞書型単語帳で覚えた方が手っ取り早いと考えるからだ。 学校で配られている人はしっかり取り組もう。それ以外なら、たとえば中高一貫校の中3生などの先取り学習としての使用が想定されるだろう。
速読英単語必修編[第6版]
- [問題数]70文
- [難易度]標準:『技術70』レベルの解釈は必要
- [到達レベル]基礎→難関:共通テスト6割→共通テスト8割9割(速熟とセットで)
速読英単語と言えばこれ。共通テストを含む、ほとんどの入学試験の対策として非常に人気のある本。 およそ共通テスト~難関レベルの単語を中心に収録し、英文数もかなりのもの。 共通テスト英語で5割~7割をさまよっている、読解力不足の人におすすめしたい。
2014年3月に新しく第6版が出た。「Z会≫速読英単語(1)必修編[改訂第6版]」こちらから第6版の内容をチェックしよう。主な変更点は以下の通りだ。
- 英文の内容が5版から5本差し替え。
- [単語冊子][長文冊子]が別々になった『分冊 速読英単語 必修編』が新しく登場。
- 通読の目安時間を表記。1回目と2回目に分けてあり目標を持って学習しやすい。
- HPで、英文構造と背景知識の解説PDFファイルを用意。「読解アシスト」ページで無料DL。
- 見出し語以外の単語にもチェックボックスを設置。
最大のポイントは『分冊 速読英単語 必修編』の登場だろう。これは「単語帳としては使いにくい」という速単のデメリットを解消する革新的なものだ。
- 参考:速読英単語必修編の使い方
速読英単語上級編
- [問題数]50文
- [難易度]難しめ:最低でも共通テスト8~9割レベルの英語力は必要
- [到達レベル]難関→最難関:共通テスト9割→早慶レベルで合格点
難関大学用の読み込み教材。出典は2次試験の英語長文からのものが多い。 収録単語はかなりハイレベルで、早慶~東大レベル以下の人は手を出す必要はない(たまにマーチ志望の人が背伸びして使っているけど)。
早慶の英文のみを収録した第二版とは打って変わって国公立二次試験の英文を多めに収録して易しくなった。 リンガメタリカと同じく、軽くスキマ時間に読める物ではないので、しっかり取り組む必要がある。最難関大レベルの人にはちょうど良い難易度だろう。
- 参考:速読英単語上級編の使い方
速読英熟語
- [問題数]50文
- [難易度]標準:『技術70』レベルの短文解釈力は必要
- [到達レベル]基礎→難関:共通テスト6割→共通テスト8割9割(速単必修とセットで)
50個の英文が収録されている、熟語版「速読英単語」。50個の英文の後ろでは、10個の単元で熟語・構文を詰め込んだ例文が収録されている。 熟語・構文を合わせて1000個収録しているので、全て覚えればほとんどの試験で通用するようになるだろう。
英文のレベルはおおよそ共通テストレベルと考えて良い。 出典的には明治大学などもあるが、英文自体は比較的読みやすいものが多いと思う。速単必修編の次に読んでみるといい。
- 参考:速読英熟語の使い方
話題別英単語リンガメタリカ
- [問題数]50文
- [難易度]最難関:共通テスト9割レベルの英語力は必要
- [到達レベル]難関→最難関:共通テスト9割→早慶レベル合格点
入試で問われる様々なテーマ知識を詳細に解説している異色の参考書。英文自体よりも、テーマ知識の解説が難しいという、少し変わった本。 最難関レベルで、英文も歯ごたえがあるものばかり。
『やっておきたい英語長文700』と英文がかぶるものがあることは有名。 速単必修や速熟と違って、「軽く1~2個読むか」といったタイプのモノではないので、しっかり集中できる環境で取り組もう。『話題別英単語 リンガメタリカ CD [改訂版]対応』も使用して音読学習していこう。
- 参考:リンガメタリカの使い方
速単はこんな人におすすめ
- 速読英単語は以下のような人におすすめだ。
- 学校で長文集を渡されていない人
- 模試でいつも時間が足りない人
- 読んできた長文が100個もないという人
順番に解説しよう。
学校で長文集を渡されていない人
公立高校で、学校で長文問題集やリーダーを読まされていない人は、圧倒的な読み込み不足に陥る。速読力を付けるためには最低でも100本~200本くらいの長文は読み込まないといけない。
進学校では『トレジャー』という教科書を採用しているところがある。これは公立高校で使う教科書の数倍の英文量が掲載されている。
そして、中高一貫校の生徒は中1からずーっとこの英文を読みこなしている。圧倒的な読み込み量の差が生まれるわけだ。
公立高校の人が難関大学に合格したいならば、進学校の人に負けないように、大量の英文を読むことは必要不可欠だ。英文の読み込み量を増やしたい人に、速単はうってつけというわけである。
模試でいつも時間が足りない人
模試や過去問で時間内に長文を読み切れない人は、読解力・速読力が足りない証拠だ。
厳密に言えば、速読力とは単熟語・解釈・英文読解など複合的なものなのだが、それらは英文を多読・音読することでまとめて鍛えることができる。 大量の英文を音読していくという勉強法が最近では人気になってきている。
「確実に読解力が伸びる!正しい英語音読の方法と10の手順」でも解説しているのでぜひ読んでほしい。英文を後ろから訳さずに、なるべく前から理解していくようにするにはどうすればいいのか。手段としては音読が最も有効だ。
読んできた長文が100個もないという人
読解力を高めるには多読が必要不可欠だ。最低でも100本は長文を読まないと話にならないといってもよい。設問はなくても構わないので、長文を読むだけの勉強を続けることがポイントだ。
速読英単語はそういった人にピッタリの参考書だ。速読英単語必修編なら、1冊で70本近い長文を読むことが出来る。
速単は単語帳ではない?速単の正しい扱い方
速読英単語は単語帳ではない。私はそう考えている。いったいどういうことか?
- 速読英単語は「音読教材」がメインのコンセプトで、「単語暗記」は二の次
速読英単語は「ターゲットなどのような辞書的な英単語のように扱うな」ということだ。これについての解説と、速単を使用する際になくてはならないCDの重要性についての解説をしよう。
単語帳としては使いづらい?
速読英単語は、純粋な単語帳としては使いづらいと思う。単語ページと長文ページが交互にあるので、単語のみを覚えようとしたときには不便なのだ。 英単語の知識を整理するためなら、普通の辞書的単語帳の方がはるかに使いやすいだろう。
その割には、単語の二義的な意味や派生語が多い。長文を読み込みつつ、派生語なども覚えるのは、使用者が要領よくやらないと難しい。 速単を学習するときは、単語の一語一義だけ覚えればいい。
あくまで「長文読み込み教材」として扱おう!
速単は長文読解量のストックを増やすためのテキストとして使うべきだし、扱うべきだ。単語を覚えるのは二の次、くらいで考えた方がよさそうだ。
長文の音読学習を繰り返していたら、自然と単語を覚えていた、それくらいのイメージで学習するといいだろう。万が一、速単の単語ページを全て覚えられなくてもOKだ。そこは普通の辞書型単語帳でカバーすればいいのだ。
CDがないと意味がない!
速読英単語には別売りでCDが売られている。このCDがとにかく高いのだが、CD音声を聴いて音読するのが最も効率的であるため、CDは必須だ。 中古で購入したり、友人とシェアしたりして、必ずCDを手に入れるようにしよう。
速読英単語と比べて、『キクタンリーディング』や『東大5分』、『速読速聴』シリーズなどは速単に比べて安いので、お金がない人はこちらを勉強するといいだろう。
速読英単語の正しい勉強法・使い方
ここからは速読英単語の具体的な勉強法について解説する。ただガムシャラに音読するだけではうまくいかないこともあるので、ぜひこのページを見ながら勉強してみてほしい。
「確実に読解力が伸びる!正しい英語音読の方法と10の手順」でも音読学習メソッドについて解説しているので、そちらも見ておこう。
まずは全文の「精読」を行う
速読を行う前に、全文を精読しよう。文構造を理解していない英文を、いくら読み込んでも意味はない。最初は英文解釈の要領で、SVOCMや句・節の関係を把握しよう。「英文解釈の勉強法」もチェックしてほしい。
サイト・トランスレーションをする
まずはスラッシュごとに英文を読み、その部分の和訳を自力で即答できるようにしよう。これをサイトトランスレーションという。 このステップが出来ないとシャドウイングをスラスラ出来ないので、しっかり取り組もう。
- 英文をスラッシュ毎に音読する
- スラッシュ毎の和訳を言う
- 最初から最後まで英→日をスラスラ言えるようになるまで練習する
- 音読に慣れたら、以下の方法でもやってみよう
- CD音声をスラッシュまで聞く(音声を止める)
- 和訳を言う(音声を再開する)
- 音声を聞く…(以下繰り返し)
これを同時通訳式勉強法という。同時通訳者が、英文を聞くそばからどんどん訳を言っていくように勉強をしていくのだ。
この勉強はリスニング対策にも絶大な効果がある。英文を聞いて、すぐさま和訳が出来るようになればリスニング試験は非常に簡単な試験になる。
瞬間和訳を出来るようにする
今度は、英文をスラッシュ毎に読んで、和訳を頭の中で瞬間的に作る練習だ。
- 英文をスラッシュまで読む
- 1秒以内に和訳を頭の中で作る
この作業をスラスラと出来るようになるまで練習しよう。 ①英文をスラッシュまで読む (1秒程度で和訳作成) ②
次のスラッシュを読む… この要領で英文を読むと、150語程度の長文なら3分~5分程度で通読できる。だいたい3分くらいで読めることを目標にしよう。
シャドウイングを繰り返す
速読英単語の勉強の最終的な目標は、CDに合わせて、本文を理解しながら音読できるようにすることだ。
これを実現するためには、「サイト・トランスレーション」「瞬間和訳」を確実にできるようにしておく必要がある。 シャドウイングを何度も行って、慣れてきたら以下のようにやってみよう。
- 最初は本文を見ながらシャドウイングを行う
- 少し慣れたら、本文から目を離しながらシャドウイングを行う
- 最終的には、本文を見ずCDだけを聞いてシャドウイングを行う
最後のステップまで出来たらOK。その長文を完全にマスターしたといっても良い。この状態でさらにシャドウイングを繰り返すことで、リーディング力・リスニング力が飛躍的に高まっていく。
まとめ
いかがだったろうか?速単は1つで色んな力を身につける事ができるので、効果的に使うことで英語力を飛躍的にアップさせることが出来る素晴らしい教材だ。ぜひ使って欲しい。
勉強法に関して下記の関連記事もぜひチェックしておこう。
速単シリーズについて詳しい内容については下の記事を参考にしておこう。