あなたは共通テストやマーチ、早慶東大レベルの英文や過去問で、英文をスムーズに和訳することは出来ているだろうか。 構文を素早く把握したり、意味の通るわかりやすい和訳を考えることができているだろうか。 英語で高得点を取るには、英文解釈力を高めることが重要だ。
そして英文解釈を高めるのに、現時点では最高レベルのクオリティを誇る「英文解釈の技術」シリーズをご紹介しよう。 本書は英文解釈の参考書ながらCDが付き、「英語を体で覚える」というメソッドを実践できる非常に使いやすい参考書だ。
問題量も多く、構造分析が図式化されていると、使いやすさに配慮したものになっている。 『入門70』『基礎100』『無印100』のそれぞれの特徴、レベル、受かるための上手な使い方を解説する。
『英文解釈の技術』シリーズの概略・特徴
『基礎英文解釈の技術100』『英文解釈の技術100』は、受験生に人気の解釈書だった。『入門英文解釈の技術70』という共通テストレベルも出たことで、あらゆる受験生のニーズに適った参考書になっている。
- [ジャンル]英文解釈
- [勉強期間]2か月:1日5題30日以内で1周→ペースを挙げて復習完了
- [使用目的]入試問題の1文を正確に和訳できるようにするため
- [勉強目標]全英文を地力で「構造把握」「音読」「和訳」出来るようにする
- [対象者]各レベルの英文を正確に読めない人
(上は各シリーズ共通)
技術シリーズの呼称と改名案
個人的に、私は以下のように参考書を呼称している。
- 『入門英文解釈の技術70』は「技術70」
- 『基礎英文解釈の技術100』は「基礎100」
- 『英文解釈の技術100』は「無印100」あるいは「技術100」
正直、『無印100』と『基礎100』がややこしい。間違って買う人もいるんじゃないだろうか?『アクセス基本』みたいに、区別しやすい参考書名への改名を希望する。たとえば「入門70、基礎、応用100」みたいな。 あとは『基礎100』は名前の割にレベルが難しいので、「基礎→標準or難関」に名前を変えた方がいい。
CD付属で圧倒的に使いやすくなった
2008年に『入門英文解釈の技術70』が出て、『基礎100』『技術100』の2冊もCDがついて新しくなった。CDが付いているのがこのシリーズ最大のメリットだと私は考えている。
音声を聴いて音読を繰り返すことで、英文解釈の思考回路を体で覚えることができるからだ。他の英文解釈の参考書で、CDがついているものはほとんどない。今後、技術シリーズをならって、CDが付くものが増えたらいいなと勝手に思っている。
SVOCM、品詞分解がなされている
解説では、文法や解釈のテクニック以外に、以下のような工夫がなされている。
- SVOCMがついている
- 修飾語の修飾先をつけている
- 等位関係を図示している
これらの解説は、これからの英文解釈の参考書では必須のものになると考えている。というより、英文解釈書なのにSVOCMが解説されていない、修飾・被修飾語の説明がないというのは、あえて選んで勉強する意味はないんじゃないかと個人的に思う。
『英文解釈の技術』シリーズ別のスペック
『入門英文解釈の技術70』で共通テストレベル網羅
- [問題数]140文:例題70、例題に対応する演習問題70
- [難易度]標準:4000語レベルの単熟語と『基本はここだ』程度の短文解釈力が必要
- [到達レベル]共通テスト6割→8割レベルの短文解釈力(共通テスト英語を確実に読める)
『入門英文解釈の技術70』は共通テストレベル。共通テスト模試でいうと7割以下の人向けのテキストだと考えている。これ1冊を極めれば、共通テストレベルで解釈出来ない英文はほぼなくなるはず。 他には中堅私立大学など非難関大学ならば技術70で十分なくらいの精読力が付くだろう。
『基礎英文解釈の技術100』でマーチレベル網羅
- [問題数]200文:例題100、例題に対応する演習問題100
- [難易度]難しめ:5000~6000語レベルの単熟語と『技術70』程度の短文解釈力が必要
- [到達レベル]共通テスト8割→マーチなど難関二次レベルの英文が読める
『基礎英文解釈の技術100』まで学習すれば、ほぼすべての大学の英文を読みこなせる力が身に付くと考えている。 実際、私は基礎100を学習した時点で早稲田の過去問を読んでみたが、その時点で解釈出来ない英文はほぼなくなっていた。
難関大学で複雑な和訳問題がでないなら、基礎100までで十分だろう。 演習問題まで学習すれば200題あるので、このテキストだけでは演習不足だ、ということにもならないはず。
『英文解釈の技術100』は最難関大の和訳対策に
- [問題数]200文:例題100、例題に対応する演習問題100
- [難易度]超難しめ:6000語レベルの単熟語と『基礎100』の仕上げが前提
- [到達レベル]難関二次が読める→京大など和訳が難しい大学の英文和訳が読める
『英文解釈の技術100』は、京大や慶応文学部など、難しい英文・和訳問題が出る大学学部の受験生向きのテキスト。 昔はかなりの人気を誇っていたようだが、速読力がますます重視される中、万人におススメできる本ではなくなってきてるのではないかと思う。
早慶上智や東大志望の受験生が技術100をやるべきかという質問をもらうが、正直京大や慶應文などの大学以外の人は技術までやる必要はない。
私は『技術100』まで勉強したが、おかげで早稲田の英文で和訳できない英文はほとんどなくなった。早慶レベルの英語で高得点を目指す人は勉強してもいいだろう。
CDは絶対に活用しよう!
キレイな和訳が出来るだけではダメ!
本シリーズはCDがついていることが最大のメリットだと考えている。たまに「CDは使ってません」という人がいるが、CDを使わないならばこのシリーズを使う意味はあまりないと思う。それくらい、CDを使うことは習得上、重要になっている。 この参考書を勉強すると「英文はこうこう、このような思考回路で読むんだな」という、日本人レベルの解釈思考回路は身に付く。
いわゆる「返り読み」とか「いちいちSVOCとかを気にしながらキレイな訳を作る」というような力だ。 もちろん、文構造を丁寧に把握して、きれいな和訳を作れるようになることは非常に大切だ。しかし、入試に通用する読解力(速読力)を身に付けるためには、そこからもう一歩踏み込む必要がある。
読解の技術を体で身につけろ!
ひとことで言うとネイティブの思考回路を身に付けることだ。前から英文を訳せるようにすること、というとわかりやすいだろうか。 英文を前から訳せるようにするためには音読が有効だが、音読するときにCD音声を利用することで学習効率は劇的に向上する。
歌を覚えるのと英文を覚えるのは同じ
私は、英語を覚えることは歌を覚えることと同じだと考えている。例えばカラオケや合唱曲を覚えたいとき。実際の楽曲の音声があるのとないのとでは、覚えるスピードは段違いに違うんじゃないだろうか。 音楽に慣れている人なら、楽譜を読むだけでもできるようになるが、経験がない人は実際に音を聞いて真似ることが大切になってくる。
私も、英文の音読に慣れた後は、音声を聞かなくても十分に音読練習をすることができるようになった。 英語はリズム感・イントネーション・発音を覚えることが非常に重要なので、ネイティブの音声を真似てリズム感を覚えることが大切なのだ。 この項目は本来、次の「3. 使用上の注意点・効果的な勉強法」で紹介するものだが、非常に重要なのでここで解説してみた。
使用上の注意点・効果的な勉強法
文法用語に慣れておこう!
本シリーズの解説は文法用語が意外に多用されている。SVOCM以外にも、主節・従属節や名詞句・形容詞句、関係詞節など、基本的な文法用語の意味はきちんと押さえていないと、解説を読むのに苦労する。 今まで文構造や文法用語に触れてこなかった人がいきなり本シリーズを勉強すると、文法用語にアレルギーが出てしまうかもしれませんので注意しよう。
例題を学習するときは「復習ページ」を見よう!
例題を学習するとき、例題ページを見て勉強してはいけない。例題の見出し(タイトル)で「何が読解ポイントなのか」わかってしまうことがあるからだ。ヒントがある状態で英文が読めてもあまり意味がない。 したがって、最初に学習するときは、例題の文章が一覧で並べられている復習ページ(例題の章の次の部分)を見て勉強するようにしよう。細かい話かもしれないがけっこう重要なポイントだ。
知らない単熟語調べに時間をかけるな?
技術シリーズは入試問題から出題されている。よって使用される単熟語はけっこう難しいものも多い。『入門英文解釈の技術70』などでは、明らかに共通テストレベルを超えた単熟語もチラホラ見られる。学習するときは語注を見たりしてもOKだ。
『入門英文解釈の技術70』ではすぐに語注を見てもよい
知らない単熟語が多い場合は、さっさと語注を見てから和訳作業に移るようにしよう。なぜか? 本シリーズを学習する目的は「解釈の技術を身に付けるため」だ。それ以外の作業は無駄と考えていい。 単熟語を調べる行為は、「解釈の技術を身に付ける」ことにあまり関係がありません。よって、別にやらなくても良い作業と言える。すぐに語注を見て時間を短縮し、その代わりに音読などに時間をかけよう。
『基礎英文解釈の技術100』『英文解釈の技術100』では初めに類推してみて
この2冊を学習するときに、1つの例題の中に4個も5個も知らない単語があるようでは困る。そういう人はさっさと単熟語を覚えなければいけない。未知の単熟語が1、2個の場合は、前後の文脈から語句の意味を類推してみよう。
難関レベルの学習者ならそういった作業も有効だ。しかし、問題文はある英文の一部を切り取ったものなので、語句の類推自体が不可能な場合もある。したがって、基本的には単熟語の類推や調べる作業に時間をかけない方がいいだろう。
和訳は紙に書かないといけないの?
初回の学習では紙に書き、それ以降の学習は声に出すだけでいいと思う。また、けっこう時間を空けて復習する場合は、紙に書いた方がいい。
参考書の正解訳は参考程度に?
英文解釈の技術シリーズの和訳は、こなれた訳であることが多い。ただし、実際このようなこなれた訳を作るのは難しい。無理にこの正解訳に合わせてしまう勉強姿勢は、むしろ害になることがある。 したがって、本に書いてある訳はあくまで参考程度にして、文構造に則っていてかつ日本語として意味が通る訳になっていればOKだと考えよう。訳を作るプロセスは以下の通り。
- 文構造に則っとった、直訳調の訳を作る
- 日本語の語順に直す
- 日本語として不自然な部分は、自然な言い回しにしたり、言い換えたりする
学習上の目的・目標
学習目的は「過去問の英文を読みこなせるようになること」
このシリーズの英文解釈書を勉強する目的とは何か? それは自分の志望大学の過去問の英文を自力で読めるようになることだ。それぞれのレベルを学習し終えた後に、過去問を解くようにしよう。 難関大志望で、『技術70』をやる場合は、「共通テストの英文をスラスラ読めるようになること」を目標にすればいいだろう。
学習目標は「①読める ②説明できる ③訳せる」の3つ
英文をCDに合わせてスラスラ読めるようにする
CDがついているので、音声に合わせてスラスラ噛むことなく英文を読めるようにすることが目標の一つだ。英文をスラスラ読みこなせることは、そのまま英文の理解度を表していると個人的に考えている。 和訳はスラスラできても、英文の音読がスラスラ出来ない人はけっこう多いので、特に力を入れて音読練習を行おう。
文構造を説明(シャドウティーチング)出来るようにする
和訳をただ言えるようになるだけでは、意味がない。それはただの暗記だ。未知の英文を自力で読みこなせるような力を身につけなければならない。 その解釈力を身に付けるために、自分で英文構造を説明するという作業が必須となる。解釈・シャドウティーチングについては「英文解釈勉強法」も見ておこう。
英文を読むと同時に内容を理解できるようにする
最終目標は、CDの音声に合わせて音読しながら、頭の中で文章内容が理解できるようになることだ。「英文を英文のまま理解できる」ようにすることと言ってもいい。 英文を一通り読んだら、いちいち和訳せずとも「なるほどね」と理解できるようにならなければいけない。ただし、いきなりこの段階に行くのは無理があるので、実際は以下のような手順で到達する。
- 英文を音読し、和訳をすぐに言えるようにする
- 英文を音読し、頭の中で和訳をすぐ思い浮かべられるようにする
- 英文を音読し、和訳を作らずに理解できるようにする
この段階に到達するには20回、30回、40回と音読練習が必要になると思う。2~3か月は毎日音読して復習を行い、英語を英語のまま理解できるようになるまで反復しよう。
相性・接続の良い参考書
『英文読解入門 基本はここだ!』
『技術70』は共通テストレベルの参考書だが、共通テスト以前の中学~高1レベルの読解が出来ていない人は、それ用のテキストが必要だ。 レベル的にも内容的にも相性が良いと思われるものに『英文読解入門基本はここだ!―代々木ゼミ方式 改訂版
本書はレベル的に高1レベルで、1行程度の短文が中心。文法用語が多用されているのも技術シリーズと相性が良い。本書で文法用語に慣れておけば、技術70の解説もスラスラ理解できるようになると思う。
『東大英語長文が5分で読めるようになる』シリーズ
これは解釈書ではなく、速単系の英文読解書。英文の音読や「英語のまま理解する」感覚がわからない人は、本書も学習してみるといい。 『技術70』を学習させても、あまり上手に使いこなせない受験生がいる。
それは音読慣れが出来ていない受験生の場合がある。 音読慣れが出来ていない人は『大学入試東大英語長文が5分で読めるようになる
『ポレポレ英文読解プロセス50』
おおよそ『無印100』と同レベルの解釈書が『ポレポレ英文読解プロセス50―代々木ゼミ方式