英語の教科書を自力で読むことが出来ない。【英文和訳力】がないせいで、英語の授業が苦痛である。 英文の構造を把握し和訳する【英文解釈力】がないために、英語を苦手とし、英語の勉強を効率的に進めることが出来ていない受験生はとても多い。

実際「英語が出来ない」学生の大半が、まともな英文解釈を勉強したことがないように感じる。 このページでは、大学受験生の「英文解釈」に関することを全て余すところなく解説していきたいと思う。 英文解釈の仕方、勉強法、そしておすすめの参考書を順番に解説する。

英文解釈の基本知識と重要性

英文解釈は、受験英語を攻略するうえでも非常に重要だ。なぜなら、英語長文とは1文の集まりであるから、1文をきちんと読むことが出来れば、長文も読むことが出来るからである。 もちろん、実際は長文を読み慣れていないと、なかなか長文が読めるようにはならない。

だが、1文を読めるようになるだけで、英語長文の勉強は非常に効率的になる。 私は英語の勉強を始めて4か月で、共通テスト英語60点レベルからマーチレベルの英文を読めるようになった。 その原動力がこの英文解釈の勉強だ。英文解釈・英文和訳力を極めることによって英語の勉強全体が効率化する。

英文解釈とは?

英文解釈とは、簡単に言うと和訳することである。もう少し正確に言うと、英文の構造を理解した上で和訳することだ。 英文を和訳するためには英単語と英熟語がわかっているのは最低条件だが、単熟語を知っているだけでは訳せない英文は多く存在する。 例えばこんな文。

  • The girl called Cathy called Tom.

使っている単語は超基礎レベルだが、訳せない高校生がほとんどだろう。実はこの文は、中学生の時に習った英文法の知識で読めるはずである。 「過去分詞が形容詞になることがある」と言えばわかるだろうか。わからない場合は英文法の講義本を読んだりしてみよう。

正解は「キャシーと呼ばれている女の子とがトムに電話した。」である。 過去分詞の形容詞用法については習ったはずなのに…という人は、英文法の知識を読解に生かせていない証拠である。英文解釈とは、英文法を読解に生かすことでもあるのだ。 ここで英文解釈についてまとめてみよう。

  • 英文解釈とは、(英文法の知識を駆使して)英文構造を正しく理解して、日本語訳を作ること。

構造把握とは?

受験業界では「構文把握」という言葉が良く使われているが、構造把握はそれとはまったく意味が違う。 天流仁志氏が著書『親と子の最新大学受験情報講座 文系編』において、構造把握について適切に説明されているので、引用させていただく。

 英語の作法「構造把握」は、比較的重要だと認識されている能力です。「構造把握」がまったくできない人は単語の直訳をでたらめにつなぎ合わせて読もうとしますが、それでは英文を正しく読むことはできません。ここまでは、共通した理解があるようです。
ただ、その先になると同じ「構造把握」でも、人によって言っている意味がずいぶん違ってきます。 正しい理解は、「主語・述語、修飾・被修飾語、接続の関係を把握して、意味のまとまりをとらえること」です。

構造把握と英文解釈とは、ほぼ同じようなものと思ってもらって構わない。 ここであなたに正しく認識してほしいことは、構造把握の定義である。英文を読むためには、英文の構造を正しく把握しなければならない

構造把握とは、単にSVOCMや構文を見抜くだけではないのだ。 古い時代の学習法しか知らない、あるいは構文把握が絶対と思っている教師などに学習法を教わると、正しい構造把握力を身に付けることが出来ないことがあるので気を付けてほしい。

  • 構造把握とは、主述、修飾被修飾、接続の関係を把握して、意味のまとまりをとらえること

『親と子の最新大学受験情報講座 文系編』は、これからの受験勉強において必須のバイブルである。「構造把握」などの学習法の解説も詳しくなされているため、ぜひ熟読していただきたい。

英文解釈の方法―具体的思考回路―

実際の入試問題を使って、英文解釈の際の思考回路を解説していこう。以下の例文を見てみてほしい。

【問題】 One of the rules of a discussion is that the participating speakers should remember the subject being discussed, and not wander away from it.

【予習1】この文の文構造を考えてください。
【予習2】訳を考えてみてください。

この英文を読みこなすために、主に3つの読解技術を使う。

  1. 英文の全体像の把握
  2. SVOCMの把握
  3. 修飾・被修飾の把握

これは先述した構造把握を、実際に英文を読む際に行う思考回路の順に並べてアレンジしたものである。「全体像の把握」は接続関係の把握、「SVOCM」は 主語・述語の関係の把握を拡大したもの。

英文の全体像の把握

英文が読めない理由の一つに「文が長くなると読めなくなる」というものがある。これは、接続詞が使われることによって、英文の接続関係がわからなくなってしまうのが主な原因である。 英文を前から訳していくのもいいが、それではうまく読めない場合はまず英文の全体像を把握するという作業が必須になる。具体的には次の3つを行うことになる。

  1. 主節、従属節の把握
  2. 等位接続詞での並立関係の把握
  3. 句のカタマリの把握

句のカタマリの把握などは、次ステップの「SVOCM」と同時にやることもある。

主節、従属節の把握

まず真っ先にやることは主節と従属節とその範囲を特定することである。主節と従属節と言う言葉は理解しているだろうか?

  • 節…SVの文のカタマリのこと。
  • 主節…従属接続詞を伴わない節で、文の中心。
  • 従属節…従属接続詞を伴う節。
  • 従属接続詞…副詞節や名詞節を伴う接続詞。(because、whenや名詞節のthatなど)

これらの用語知識は知っていて当たり前の常識なので、しっかり暗記してほしい。他にも、全体像の把握のために覚えておいてほしいルール・技術をいくつか示す。

  • 続詞の数=英文数-1

英文(節)が2つ以上ある時、必ず接続詞(関係詞)が1個あるということだ。

  • When I was young, I lived in this city.

この文の場合、文が2つあることはわかるだろう。接続詞はWhenが1個。つまり上のルールに当てはまる。文が3つあるなら接続詞は2つ。文が4つなら接続詞は3つ。このルールを使って節の数を特定することが出来る。

  • 主節とは、接続詞を伴わない節(SV)のことである

1文の中に2つ以上の節があったときは、主節と従属節を分ける作業を行う。主節とはつまり接続詞のない節のことで、文字通りその1文全体のメインとなる節のことだ。

  • When I was young, I lived in this city.

この文の場合、接続詞を伴わない I lived in this city. が主節である。

  • 副詞と前置詞句をカッコでくくる

主節・従属節を読み取れない人は「副詞と前置詞句をカッコでくくって一旦無視する」というテクニックを使うと良い。 前置詞句とは「前置詞句=前置詞+名詞」のことである。in Japanなどが前置詞句である。

  • テクニックを実践してみよう
One (of the rules) (of a discussion) is that the participating speakers should remember the subject being discussed, and not wander away (from it).

英語初心者は、前置詞句を見つけたら毎回カッコをつける癖をつけてほしい。 カッコを無視して読んでみると以下のようになる。

One is [that the participating speakers should remember the subject, and not wander away].

さっきよりもずいぶん読みやすくなったのではないだろうか。前置詞句や副詞などの修飾語は、英文の贅肉のようなものである。贅肉を取り除くと、英文の骨格が見えてくる。この英文の骨格の把握力はとても重要だ。 thatは名詞節を作る接続詞だ。範囲はthe participating~文末まで。名詞節で文の補語Cである。1文目はOne is that~というSVC文型。 One is thatが主節。that以下のparticipating speakers should rememberが従属節になる。

等位接続詞・並立関係の把握

等位接続詞は全部で6つ。「and,or,nor,but,so,for」これは全て暗記しよう。

等位接続詞とは、語・句・節を対等に結ぶ接続詞である。

対等に、と言うことが重要である。名詞と名詞、動詞と動詞、というように、文法的に同じものをつなぐ働きがある。名詞と形容詞をつなぐことなどはない。

  • 位接続詞はまず右から見る

等位接続詞を見たら、まず接続詞の直後(右)を見るのが基本技術となる。

One of the rules of a discussion is that the participating speakers should <remember the subject being discussed>, and <not wander away from it>.

andが何をつないでるか考えてみよう。まず右を見てみる。するとnot wanderという動詞がある。次にandの前を見てみると、rememberという動詞が見つかる。 ここでは素直に、rememberとnot wanderという2つの動詞が並んでいるのだ、と考えればいいだろう。

ここで考えてほしいのは、shouldという助動詞がrememberだけでなくwanderにもかかっているということ。これは等位関係をきちんと考えていないと気付かない。

句のカタマリの把握

    • 句…SVを含まないカタマリ

句とは不定詞句や名詞句、前置詞句などのことだ。句の部分は下線部を引いてカタマリとして把握するようにしよう。修飾語句はカッコをつけよう。

One (of the rules) (of a discussion) is [that the participating speakers should remember the subject (being discussed) , and not wander (away (from it) ].

このようにカタマリで英文を捉えるとわかりやすくなる。訳を考えるときもまとまりで考えることが重要だ。 英文の全体像を把握する際は以下の3つを実践しよう。

  1. 主節、従属節の把握
  2. 等位接続詞での並立関係の把握
  3. 句のカタマリの把握

 

SVOCMの把握

英文の全体像を把握したら、次はSVOCMを把握して和訳をしていこう。まずはSVOCMの確認。

  • S 主語(名詞がなる)
  • V 動詞(動詞がなる)
  • O 目的語(名詞がなる)
  • C 補語(名詞、形容詞がなる)
  • M 修飾語(前置詞句)

このまとめは必ず完ぺきに覚えなければならない。英語が得意な人にとっては「九九」くらい常識であるからだ。 実際、句のカタマリを把握することが出来ていれば、SVOCMの把握は難しくない。

One (of the rules) (of a discussion) is [that the participating speakers should remember the subject (being discussed) , and not wander away (from it) ].
  • One (of the rules) (of a discussion)がS。
  • isがV。そしてthat節が文末までで節全体でC。これが英文の骨格。
  • that節は、 the participating speakersがS、should rememberがV、the subject (being discussed)がO。
  • being discussedはM。
  • andはrememberとwanderを並べている。
  • not wanderが2個目のV。
  • awayは副詞で from itはM。

冠詞、代名詞所有格は名詞句のサインであることも覚えておこう。

aとtheの冠詞、my,your,ourなどの代名詞所有格は、名詞句を作る。よって、theがあると必ず名詞句を作ると考えられる。

英語はほとんどが名詞で構成されているので、名詞句を把握することは構造把握するうえでもとても役に立つ。

修飾・被修飾の把握

最後に、形容詞や副詞句などの修飾語が、どのカタマリにかかっているのかを把握する。

修飾語は離れた部分にかかることもある

たとえば以下の文の不定詞の副詞用法が何にかかっているのかを考えてみよう。

I went to America to study English.

ここでの不定詞は「went」という動詞を修飾している。修飾語は基本的に直前・直後を修飾するのだが、この例文のように修飾語は前後だけでなく、少し離れた部分を修飾することがあるので注意が必要だ。

修飾語が何を修飾しているか考える

One (of the rules) (of a discussion) is that the participating speakers should remember the subject (being discussed), and not wander away (from it).
  • of the rulesがOneを修飾。
  • of a discussionがthe rulesを修飾。
  • being discussedがthe subjectを修飾。
  • これは過去分詞の形容詞用法。
  • これが述語動詞の過去形に見えた人は基礎からやり直さないとダメ。
  • 過去分詞の形容使用法は中学英語の内容だ。awayとfrom itがそれぞれwanderを修飾している。

【正答訳】

良い議論をする上で守るべきことの1つは、議論に参加する人が討議中の議題を忘れずに、それから脱線しないことだ。

どうだったろうか? 英文を読むときは「全体構造から部分へ」そしてSVOCMや修飾語句を正確に把握するようにしよう。

英文解釈の具体的な学習法

ここからは、実際にテキストを使って英文解釈を勉強する時の方法について解説していく。

『英文解釈の技術』シリーズを使用する人は「英文解釈の技術 シリーズ解説」を参照してほしい。勉強上の注意点などをこれでもかというくらい詳しく解説している。

英文解釈学習の目的と目標とは?

英文解釈を勉強する目的とはなんだろうか。それは入試英文を自力で読めるようになるためである。

目標とは、英文を自力で読めるようにすること、もう少しいうと自力で英文の構造を把握し、説明できるようにすることである。

なぜ説明できるようにならなければならないのか。説明できるということは、正しい思考回路が作られているということだからである。

英文解釈の勉強手順

英文解釈を勉強する時は以下の手順で行おう。

  1. 問題文を読み、構造把握を行った上で和訳を紙に書く
  2. 解説を熟読し、自分の解釈・和訳が正しいかを確認する
  3. 「自分の訳」と「正答訳」を比較して、自分の訳の直すべきところを検討する
  4. 英文を完全に理解できたら、今度は自力で構造把握を説明しながら行う
  5. 英文を意味のまとまりごとにスラッシュで区切り、音読していく
  6. その日のうちに5回、その後1週間以内で合計20回音読練習を行う

一つ一つ解説していく。

問題文を読み、構造把握を行った上で和訳を紙に書く

まずは問題を解いていく。その際、和訳をきちんと紙に書いておこう。出来れば問題文もコピーし、SVOCMや接続関係<>を直接に英文に書き込んでほしい。

なぜ書くかと言うと、自分の解釈や和訳がどう間違っていたのかしっかりと検討できるからだ

紙に書かずに口頭で訳すだけだと、自分の解釈の思考回路のどこを直せばよいかわからなくなってしまう。思考回路を修正しないという勉強は何の意味もないことを認識してほしい。

さて、この段階ではわからない単語はすぐに調べてもよい。単語の類推などは英文解釈の勉強では必要ないと考えている。

英文解釈の技術 シリーズ解説」でも述べているが、英文解釈の勉強の目的は解釈力を身に付ける事なので、単語調べなどに時間をかけてはいけないのだ。

しかし、問題文をいちいちコピーするのは手間がかかると思う。生徒には問題文のPDFファイルをコピーして使わせている。

英文解釈の超重要な復習法

英文解釈の復習方法は、勉強の目標を考えれば簡単だ。まず、英文学習の目標とは何か。スラスラ自力で英語を読めるようになることである。

英文解釈の目標は、自力で英文構造を把握し和訳できるようになることである。先述した英文解釈のテクニックをまず出来るようにならなければならない。

  • 英文の全体像の把握
  • SVOCMの把握
  • 修飾・被修飾の把握

そのほかにも、英文をスラスラ音読できるようになることも大事だろう。これは英語という語学を学ぶ際に必須の習慣であろう。

もう一つ、和訳をスラスラ言えるようになることも出来なければならないだろう。 私は生徒を指導する時、いつも次の3点が出来ているかどうかをチェックする。あなたが復習するときに参考にしてほしい。

  1. 英文をスラスラ音読できるか
  2. 構造把握をスラスラ説明できるか
  3. 和訳をスラスラ言えるか

 

英文解釈の復習では和訳を毎回紙に書くのか

英文解釈の復習では和訳を書いた方がいいんじゃないでしょうか?英文を音読して和訳を言うだけでは不安です。

このような質問を生徒からいただいたことがある。非常に良い質問である。 結論からいうと書く作業は不要だ初めて勉強するときはなるべく和訳を紙に書いた方がいいが、復習の時は和訳を声に出して言ったり頭の中で作るだけで十分だと私は考えている。

というよりは、読み込みを重ねていちいち和訳を考えなくても英文を理解出来るようにしてほしいのだ。 英文解釈のテキストも最終的には速読出来るようにしてほしいが、書くだけでは速読力はつかない

  • 英文読解の全てに共通する学習目標は「英文を音読しながら文章を理解できるようになること」

つまり、いちいち和訳を書いたり言ったりしなくても英文を理解出来るようになることだと考えている。英語を英語のまま理解すること、と言われたりもする。この目標を考えると、書く作業はその目標に向いた作業ではない。なぜなら、英文を読んだ直後に一瞬で和訳を作ることは出来ないからだ。

1行分でも10秒はかかるだろう。音読だけなら3秒ですむ。書くのはどうしても時間がかかるのだ。大した差じゃないと思うかもしれないが、それが英文を10回読み込めるか、20回読み込めるかの差を生む。私は「英文の解釈の技術」などの英文は100回以上読んだり聞いたりした。

CD音声に合わせて音読する、英文を見ないでCD音声を聞いてシャドウイングをする。このようなことを繰り返したので、中学レベルから初めて短期間でマーチ、早稲田レベルの英文の構造把握が出来るようになった。 ということでもう一度結論。解釈の復習において、書く作業は基本的に不要

1回目は書いた方がいいが、それよりも英文を読みながら文章を理解できるような勉強に時間をかけよう。それと英文の構造を自力で説明できるようにシャドウティーチングを繰り返すこと。

和訳が書けるようになるだけではせいぜい定期テストで得点できるレベル。模試などで得点するためには、速読や音声を聞いて理解出来る段階までやり込む必要がある。

この重要性を認識しないまま漫然と勉強しても成績は上がらないから常に意識しながら勉強しよう。

英文解釈のおすすめ参考書

それぞれのレベルのテキストを使用してみよう。たまーに「英文解釈の参考書ばかり勉強している受験生」がいるが、多くても3~4冊程度勉強すれば十分だ。

さて、以上をまとめておこう。

  1. 1~3の手順を完全に覚えて実践する。英文を読むときは常にこの順序を意識して読んでみる。
  2. 英文解釈の勉強を行う。その際この手順を覚えて実践してみる。
  3. 解釈のテキストを勉強するときは①英文の音読 ②英文の構造を説明 ③和訳を言う この3点が出来ているかをチェックするようにする。