大学受験現代文のベストセラー参考書である「入試現代文へのアクセス 」シリーズについて解説する。2013年11月に『入試現代文へのアクセス 完成編』が新発売。
『五訂版』『発展編』もそれぞれ『入試現代文へのアクセス 基本編』『入試現代文へのアクセス 発展編』となり、ますます充実したラインナップとなった。非常に優秀な問題集だが、使い方を誤ると成績を上げることが出来ず、宝の持ち腐れになってしまう。
今回はシリーズ3冊の内容紹介と使い方を解説する。
『入試現代文へのアクセス』とは
アクセスは現代文の鉄板ともいえるベストセラー参考書だ。「迷ったらこれ」と言えるくらいクオリティの高い問題集で、受験生にはぜひおすすめしたいテキストになっている。
各シリーズに共通する基本スペックは以下の通りだ。
- [ジャンル]現代文問題集
- [勉強期間]1冊1か月~2か月程度
- [使用目的]読解力と解答力の両方を伸ばすため
- [勉強目標]全問題を根拠を持って解答できる(シャドウティーチング)
- [対象者]各レベルの現代文で合格点を取れるようにしたい人
『入試現代文へのアクセス』の良い点
- 本文解説が詳しい。
- 設問解説が非常に詳しい。
- 本文の意味段落ごとの「小見出し」がついている。
- 適宜、図や表を用いた解説がわかりやすい。
類書と比べて決定的に違うのは「本文解説がしっかりしている」ということだ。現代文の参考書は本文解説が一切ないものもある。読解力を高めるためには、本文解説がある方が良い。
『アクセス基本編』の基本スペック
- [問題数]16題:例題4題+基本6題+応用6題
- [難易度]易しめ:1冊目からでも十分いける。不安な人は背景知識を勉強してからだと余裕。
- [到達レベル]入門→基礎:共通テスト4割以下→共通テスト6割
『入試現代文へのアクセス 基本編
問題レベルはハッキリ言って易しい。これくらいの問題ならば満点を取って当たり前と思ってほしい。公立の高校生なら高1でこなしておくべきテキスト。
現代文参考書の鉄板ゆえに「アクセスだけで大丈夫」と考える人もいるが、これ1冊で共通テストや私大で高得点は到底取れないので注意。
『アクセス発展編』の基本スペック
- [問題数]16題
- [難易度]やや難しめ:共通テスト6割、『現代文単語』などは仕上げておきたい
- [到達レベル]基礎→難関:共通テスト6割→共通テスト7割8割
『入試現代文へのアクセス 発展編』も改訂され、「問題冊子」巻末に各問題の150字要約が追加された。
要約がついたことでより一層効果的な学習をすることが出来るようになった。これから『入試現代文へのアクセス 発展編』を買おうとしている人は、要約が付いているかを確認して購入しよう。
発展編はおよそマーチレベル攻略のための参考書と思ってもらっていい。
問題文のレベルは『基本編』よりも上がってはいるが、割と設問が素直なので、背景知識と『アクセス基本編』やもう一冊問題集をこなしていれば十分使いこなせる。
『アクセス完成編』の基本スペック
- [問題数]16題
- [難易度]難しめ:共通テスト8割程度の学力は欲しい
- [到達レベル]難関→最難関:マーチ合格点→早稲田易しめ学部合格点
『入試現代文へのアクセス 完成編』は最難関大学対応のアクセスシリーズ。早稲田・上智志望の受験生や難関国公立生におすすめだ。
巻末には200字要約もある。要約問題にもしっかり取り組めば確実に力がつくだろう。
河合出版には様々な現代文テキストが出ているが『入試現代文へのアクセス 完成編』は難関私立大学を目指す人におすすめだろう。
『アクセス』構成と特徴・上手な使い方
- まずは問題を解く。30分程度を目安とするが、苦手な人は40分を限度とする。焦らずじっくり丁寧に解く
- 問題を読みながら各段落の要旨を「ヒトコトメモ」しておく。このメモが読解力向上に欠かせない
- 問題文はコピーして、筆者の主張には線を引いたり、言い換え部分をつなげたりする
- 設問を解く。何を問われているかきちんと考える。
- 傍線部分を丁寧に読む。主語と述語を把握し、選択肢部分を比較して考える
- 解答の根拠をノートにメモする。「本文に○○と書いているから、それと一致するウが正解」といった正解の根拠をメモ
- 「アは○○が逆のことを言っていて×、イは傍線部の段落の話題と全く違うから×」というように不正解の根拠もメモ。
- 選択肢は文節ごとにスラッシュを引き、○×△をつけて検討する
- 注の語句は全部覚えてしまう。
- 問題を解いたら本文解説に入る。重要キーワードは「背景知識の勉強法」を参考に覚える
- 各段落の解説を熟読する。自分がメモした要旨が合っているか丸付けをする
- 解答解説を読み答え合わせ。正解・不正解関わらず解説を熟読する
- 選択問題の解説は「各選択肢のどこがどう間違え」ているかも書いている。それらを熟読して理解し、自分で解説できるようにすることが超重要
- 間違えた問題と根拠を持って解けなかった問題は復習対象とする
- 解説を読んだら終わり、ではなくもう一度問題を解く
- その際【解説を真似て解く】事が出来るか確認。出来ないならもう一度解説を読みシャドウティーチングをする。スラスラ説明できるまで繰り返す
- 『発展編』『完成編』の場合は要約問題にも取り組んでみる
- 全ての問題をシャドウティーチングできたら次の問題へ
- 翌日、1週間後には必ず復習をする
- 復習する際は設問だけ見るのではなく、本文を1回通読する。
- その際ただ読むのではなく言い換えや話題転換、筆者の主張などを意識しながら読む(書き込みしていない冊子の方を読む)
- 余力があれば本文解説にある「意味段落ごとの小見出し」を自力でつけられるか口頭で言ってみる
- 「各段落のひとこと要約」を口頭で言った後、全体の要約を口頭で言ってみる
『入試現代文へのアクセス』は読解力と解答力を鍛える工夫でいっぱいだ。
もしあなたがこれらのポイントを見て「多すぎ!細かすぎ!」と思ったのなら、アクセスを十分に使いこなせてはいないことになる。あるいは使いこなせないはずだ。
本文解説が詳しいテキストなのに、本文を何度も読み込まなかったり、意味段落ごとの小見出しを分析しなかったり、要約に取り組まないのは非常にもったいない。学力向上のチャンスを逃していると言わざるを得ない。
解答解説も丁寧なのだから、根拠を持って正解を選ぶシャドウティーチングを「これでもか!」というくらしつこく反復してほしい。
1冊をしゃぶり尽くすように使い切ることで、あなたの現代文は確実に伸ばすことができるはずだ。
まとめ
私は決して河合出版の回し者ではないです(笑)ただ、以上述べたように、現代文へのアクセスは成績を上げるために役立つ内容が盛りだくさん。
今までは最難関私立向けのテキストがなかったため、他の出版社の参考書を組み合わせることを薦めていた。これからは「アクセスルート」がしばらく受験現代文の鉄板となるかもしれない。
『現代文へのアクセス』の良改訂に刺激されて、より使いやすい参考書が出ることを期待する。
すみません。欲を言わせてください
メリットばかり挙げてきた「現代文へのアクセス」シリーズですが、あえて要望を言います(笑)
それは「本文分析」があるとなおよいということだ。『現代文と格闘する』や『上級現代文』などにみられる「本文の言い換え、対比構造」などが図式化されたら、なお良いと考えている。
本文の書き込み例などもあったらいいなぁーとは思うが、アクセスの雰囲気には合わないかな…とも思う。そしてそれは欲張りすぎかな。